バイバイ熱中サマー

 

 

 

 
9月になっても相変わらずの残暑だけど、自転車に乗っていると少しずつ秋の風が吹いてきているのがわかる。
こう言い方をしては語弊があるけど熱中症ってなんかいい響きだな。なにかに熱中して熱に浮かれたまま死にたい。
熱中といえば「熱中時代」という水谷豊が先生役の学園ドラマが流行ったころ、ちょうど小学生だったのだけども
高学年にあがるときほんとうに嵐を巻き起こす先生がやってきた。先生は深海魚みたいなちょっとグロテスクな青い
魚の絵ばかり描いている絵描きでもあり、テストのプリントにはいつもその奇妙キテレツな魚の絵が添えてあった。
先生は学校のカリキュラムなんかまったく無視して放課後も暗くなるまで授業を続けたかと思えば、翌日は授業を
サボって一日中遊んだりした。特に数学と美術の授業に偏重していて小学生なのに中学数学の平方根を教えたり、
全学年を体育館に集めてアートのワークショップをやったりしてた。でもそれはワイワイ楽しくというようなもの
ではなく私語厳禁のおそろしくストイックなものだった。運動会の練習もたいへん厳しく北朝鮮マスゲームばりの
気合いで芸術的な組体操をやったし、学芸会はもちろん本気のシェイクスピアだった。先生の美意識に妥協はない。
怒ると超こわいし感動すると泣き出す。ともかくそういうヘンな奴だったけど何故か生徒からの人気は絶大だった。
先生のよいところは子供を子供扱いしなかった。子供にシェイクスピアなんかわからないとか子供だからこんなもん
だろうとか、そんな風に子供を舐めたりしなかった。先生のそばにいるだけで爽やかな風のようだったよ。