プチ冨士講

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
富士講というのは江戸時代に大流行した山岳信仰の一種で、江戸から甲州街道を経て富士山頂を目指しおよそ140キロの行程を
歩いたそうです。信仰でもないと140キロを歩こうとは思わないけれども、自転車なら日帰りでも行けるよね?と考えるのが
自転車狂ならぬ自転車教の教えなので体育の日に自宅から五合目まで走ってきました。だいたい人間30歳を過ぎたあたりから
基礎代謝が急速に落ちてきて「運動しないとデブる」そういう強迫観念と腹の肉に押しつぶされそうになってくるわけですけど、
どうせ運動するなら楽しくやりたいじゃないですか。運動楽しいねー楽しい楽しい!でもちょっと苦しい?苦しいけど楽しい?
楽しい苦しい楽しい苦しい苦しい苦しい苦しい、く、くるじいいい!もう健康のためなら死んでもいい!!そこまで自己暗示に
かかればしめたもんです。早速リュックにカメラとバナナとおにぎり詰め込み野に咲く花のようーに風に吹かれてー♪ 山下清か。
ルンルンピクニック気分で出発したら冨士講ぜんぜん甘くなかった。道志みちの峠を2本も3本も乗り越えてやっと山中湖に
辿りついても、とどめに待ち受ける標高2300mの五合目が天竺より遠かった。終わりなき登り坂が延々続く富士スバルライン
地獄のデスロード。シナイ山を目指すユダヤ人の苦しみがよくわかりました。マジ四合目あたりでもう奴隷に戻ってもいいから
何度エジプトに引き返そうかと思いました。そうまでして苦しみを乗り越えた先に何かがあるのかというと何もありません。
海も割れなければありがたい経典もない。あるとすればエンドルフィンによるささやかな自己陶酔と己の体力への過信、そんな
信仰が生まれましたとさ・・めでたしめでたし。総走行距離155キロ。帰りは五合目ですっかり日が暮れてしまい、凍えながら
山を下り富士吉田駅から電車で帰ったのですが、自転車のよいところは途中リタイヤしても車輪をバラして輪行バックに詰めて
しまえば酒でも飲みながら電車でもバスでも帰れることです。