愛のビョーキ　４選

　
「冷たく冷えた月」
チャールズ・ブコウスキー原作。セックス・アルコール・ロケンロ〜♪ジミ・ヘンドリックスに憧れるデデと魚工場で働くシモン、
ロクでもないダメ中年男の二人組が酔った勢いで死体を盗んでしまう。ところが死体袋を開けてみてびっくり、美人すぎる死体。
ムラムラとこみ上げてくる欲望に辛抱たまらず二人は屍姦をしてまう。コトが済んだ死体を抱き抱えて海に捨てるのだった。
そのシーンをずっと前に描いたのが上の画なんですけど、あらすじだけ書くと救いようのない酷い内容なんですけど、
そんな内容とは対照的にモノトーンのフィルムが浮かび上がらせている死体の量感がたいへん美しく、「美」ってモラルとか
倫理観だとかそんなものとは関係ないところにあるんだよなぁとおもいました。
　
「ボクシング・ヘレナ」
デヴィッド・リンチの娘ジェニファー・リンチの監督デビュー作。変態青年医師のニックはヘレナを偏執的に愛するがあまり、
彼女の両手両足を切断して拘束してしまうというお話。久しぶりに再鑑賞してみようと思ったらDVDもビデオもなかった。
以前、海外旅行中に拉致された女の人が両手両足を切断されて「だるま女」として倒錯者の間で売買されているなどといった
都市伝説が流行ったことがありましたけど、この映画も公開当時はそんな猟奇的でスキャンダラスな面ばかり騒がれてました。
自分が観た記憶を辿るとそんな猟奇的な映像などなくて、ひたすら耽美的かつデカダンスでめくるめく虚構と現実の入り交じった
ニックとヘレナの倒錯的な愛の駆け引きが密室で延々と描かれていて、もう見てるだけで酔っぱらった気がする。
好きな人を拘束してイタズラしたいというのは男の幼稚な定番妄想ですけど、ボクシング・ヘレナにおいては心理的な支配関係が
逆転していて、ヘレナの手足の自由を奪ってもニックは彼女を自分のモノにはできない。ヘレナに性的欠陥をなじられるニックの
弱さは男の性のデリケートさでもあり、心とチンコはいとも簡単に引き裂かれてしまうものなのだ。普通に勃起するということが
どんだけ奇跡なのかということを改めて考えさせられた気がする。しつこく変態ヘンタイ書いてますけど、さすがに屍姦だとか
だるま女とかムリだから。勃たないから。
　
「愛のむきだし」
ゆらゆらの「空洞です」を聞いて思い出してやっとDVD観ました。たくさんの人がレビューを書いているので割合しますけど、
奥田瑛二の娘の安藤サクラの不思議顔と白い服がエロかった。黒いものを封じ込めた白はいやらしい。飛び散る血が真っ赤。
語るに及ばない直球さ。むきだし。
　
「素粒子」
原作はフランス文壇を揺るがせる事件といわれた問題作らしい。ドイツ映画。ブルーノとミヒャエルは異母兄弟なのに全く正反対
ともいうべき悩みを抱えている。性的衝動を抑えられずに社会からドロップアウトしたブルーノは怪しいクラブやフリーセックス
のヒッピーコミューンに出入りするようになってしまう。一方で性的欲求がなく感情を表に出すことができない天才生物学者の
ミヒャエルは、セックスに頼らない生殖を可能とするクローン技術の研究に没頭している。この二人を軸にした兄弟それぞれの
屈折した恋愛物語が交互に描かれてる。端的にいってしまうと救いようのないエピソードばかりを紡いだ悲劇なんですけど、
あえて心理描写をドロドロと描くことなく映画全体が淡々とした空気に包まれている感じが、むしろリアルでせつないです。
ラストが結構ショッキング。あんなシーンは映画でもあんまり見たくないなぁとおもいました。ヒッピーコミューンが底抜けに
白痴ぽく描かれていたのは面白かった。
　
そういうわけで昨日はインビクタス観てきたのですけど、ビョーキ映画ばかり見たあとだったからなのか？すごく爽快感があった。
ミリオンダラー・ベイビーもグラン・トリノもなんだかなぁ・・と思っていただけに。いや〜映画って本当にいいもんですねえ〜
　