ヒュルリーラ ヒュルリーラ


 
去年から何度かワークショプを一緒にやってきた学生達が卒業するというので飲み会に参加した。そのまま流れで
朝の6時までノンストップのカラオケリレーに突入して、こっちは無理してオレンジレンジケツメイシなのに
おまえらなんで尾崎豊とか布施明なの?ふざけながら〜じらしながら〜薔薇より美しいああ〜キミは変わった〜♪
てなんなの?盗んだバイクで走り出したとおもったらなに交代で寝てるの?寝るなコラ?とおもったら復活?
宿直当番か?結局朝まで一睡もしなかったのは自分だけだった。おっさんの鼻くそみたいな意地が若者に勝った。
学生のころといえば、毎年春になると目まぐるしく環境が変わってクラスが変わったり卒業したり入学したり、
体育館の裏でボコられる人、告られる人、たとえば中学時代の自分は暗い地味な学生だったんだけど卒業する時に
スカートが長いギザギザハートのヤンキーグループの女子の1人からなんの伏線もなく唐突に第二ボタンくれよ
って言われて怯えながら敬語で断った記憶がある。ただでさえ童貞で女が怖いのにナイフみたいに尖ってんだぜ?
そもそも第二ボタンなんか集めてどうすんの?床に魔法陣だの描いて第二ボタン並べて呪いでもかけるの?
第二ボタンが心臓に一番近いからって説はホント?今でもそういう風習ってあるのかしら。そんなこんな学生達の
期待と不安の入り混じったもやもやした春も社会にでるといろいろ事情が違ってきて、環境を変えるも変えないも
自分の選択次第となるわけですけども、まあ辞令とか倒産とかクビとか不可抗力で変わってしまう人もいるけど、
自分の経験からいうと環境が変わるのはとても怖いことであると同時に福音です。去っていくものに執着しない。
去ることをためらわない。もう自分に合わなくなったものにしがみつかない。どれだけ愛着があってもずっと固く
握りしめているといつか潰してしまうよ。花に嵐のたとえもあるさ、サヨナラだけが人生だ。