男旅しよう





 
自転車で富士山を見に行きましたよ。トータル160キロほど走って水4Lも飲んだ。リッター40キロ。2キロ痩せた。
空は薄く青く、鯉のぼりを吹き抜ける風は柔らかく、残雪の富士山は輝かしくも荘厳で、森の圧倒的な静寂を聴きました。
道志みちという神奈川県から山梨県の山中湖へ抜ける山道がありまして、山中湖に出る前に標高1100mの山伏峠を越えねば
ならないのですけど、峠の登りにさしかかったあたりでお父さんと小学生ぐらいの男の子の自転車2人組を見かけました。
抜きざまチラッと様子見た感じだとどうもここまで自転車でがんばって走ってきたのはいいけれど、男の子がそろそろ限界で
フテくされているのをお父さんがなんとか説得してなだめているような感じだった。大人でもこの峠を越えるのはけっこう
厳しいのに小学生の体力じゃ正直まだムリなんじゃないのお父さん。星一徹か。峠の星か。自転車を押して歩いて登ったと
しても日が暮れちゃうよ。そんなことを思いつつもこっちも余裕はないのでゼェゼェしながら坂を登り、だんだん悲しい女工
のような気分になりそのうち血を吐くんじゃないかしら・・富国強兵のバカ!そろそろカンベンしてください・・と泣き言が
でるころ峠の頂上のトンネルに辿りつきます。道路脇の草むらにぶっ倒れているチャリダーたちが殉職者みたいだった。
でも峠の頂上のトンネルを抜けると一気に下りになって眼前にひとまわり大きく壮大な富士山がどーんと見えてくるという、
旅のエンディングとしては実に心憎い演出が待っていて意味もなく泣けてくる。だからキツいけど何度でも来てしまう。
あの男の子は峠を越えられたのかなあ。この自転車体験がトラウマにならなければいいけど。今回はダメだったとしても、
いつか自分の足で峠を越えて見た富士山は泣きそうになるほど美しく見えるから。大きくなったらまた自転車で来てごらん。